2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

黒田夏子「abさんご」

早稲田文学新人賞を受賞した黒田夏子さんの短篇「abさんご」がとてもおもしろかった。描かれているのは語り手の私的な回想に属する過去の出来事やそこで感じられたり考えられたりしたさまざまな観想なんだけど、しかしこの過去の世界が、語り手や語り手自…

アガンベン『裸性』

収録されてるどの論考もおもしろかったけど、なかでも本のタイトルにもなってる「裸性」という文章が自分の関心のあるものと接点がありそうな内容になってて興味深く読めた。(おもしろさという点だけなら、カフカを論じてる「K」という論文も抜群に鋭くて勉…

ロブ=グリエ「もどってきた鏡」

『早稲田文学5号』に掲載されてるロブ=グリエ「もどってきた鏡」の連載初回分(連載途中の作品にかんしてはあんまり断定的な口調でものを言わないことに決めた。なぜなら、以前書いた連載中の『農耕詩』とか『青い脂』についての文章でたっぷり恥をかきまし…

ウラジーミル・ソローキン『青い脂』

芸術における「表象的体制」が作品の表現のなかで執りおこなうある調整といったものについて、『イメージの運命』のランシエールは、それは再現されるべき見えるもののイメージを観客や鑑賞者といった作品の受け手の眼前に可視化しながら、他方で見てはなら…