2013-01-01から1年間の記事一覧

しるしと人生―― 『ヴァージニア・ウルフ短篇集』

「でも、それからどうなったんですか――もうひとりの男の人は、家の角を曲がってきた男の人は?」一同は尋ねた。「もうひとりの男の人? もうひとり?」アイヴィミー夫人は小声で言った。屈んで袖無し外套(クローク)を手探りしていた(サーチライトの光はバル…

ハイデッガー『芸術作品の根源』

5、6年前に一度読んだきりだったものを久しぶりに再読。最近ではデリダやジュネット、アインシュタインなんかの芸術関連の著作がちょっとずつ積読棚にたまってきていて、それらの本を今後読んでいくためにちょうど測距儀みたいな役割を果たしてくれるよう…

スプーン持参の超能力者、暖簾をくぐって登場

今週はカール・アインシュタインの小説『ベビュカン』を難儀しながら読み終えたらすでに一週間が終わっていた。……だいたい終わっていた。本文で100頁ほどの小さな作品なんだけどその分量と釣りあわないくらいの、ちょっとした体力が必要な読書を強いられるよ…

吐く息が一呼吸ごとに目の前の大気を打擲するむちの朝のようだった。むっくむく鳥。 むっくむくやったで。……今週は文庫でトリスタン・ツァラの『ムッシュー・アンチピリンの宣言(ダダ宣言集)』を読んで、それからカール・アインシュタインの小説『ベビュカン…

フーコー『カントの人間学』

蛇「シャーッ!」 カントの「純粋理性批判」の上巻を読み終えたところでフーコーの『カントの人間学』に手をつけたのが早お正月の頃のはなしで、つまり、以来十日以上この本を繰り返し読んでたことになるけど(3回は読み直した)、残念ながらけっきょくはかば…