下書き29日目


 28ページ目を終えて29ページ目の半分すぎたくらいまで。
 くしゃみをする幽霊っていうのもおもしろい。ロシア人と日本人とでは幽霊というものに対する感覚が違うんだろうか。それともロシアのゴーゴリ読者もこのあたりの間が抜けた感じで笑ってしまうんだろうか。幽霊っていうと、なにかもっとこう、稀少性というか、あんまり大勢の人前なんかにおおっぴらには現れないってイメージなんだけど。個人的な因縁があったり、特別な条件においてたまたま地雷を踏んだ人だけが幽霊に見舞われるってイメージだけど、幽霊のアカーキイはそんなことはなくて、もうのべつまくなしに夜な夜な人々の前に現れてはコートをかっさらっていき、生前よりずっと生き生きと活動して注目の的って感じだ。
 マンガの中での描写では、幽霊っていうよりも鬼とか吸血鬼みたいなイメージでアカーキイを描いてみた。息を吐けば白い吐息が盛大にのぼるし、細マッチョみたいな体格になってアメコミ度も50パーセント増しって感じだ。このあたりのアレンジもゴーゴリの原作とは関係なく個人的な好みにしたがって採用した(ゴーゴリのアカーキイはめちゃくちゃ怒って誰かを恨んではいても、マンガの中で描いたみたいに怪物みたいな力強さを身にまとうなんてことはない)。
 こういう暴力性というか筋肉の運動に対する過剰な信頼とか嗜好みたいなものも、描いている人間として個人的に心当たりがあるところのものだ。もちろん、自分が毎日誰かとリアルでケンカしてるような人間だとかいうことじゃなくて、一皮向けば無批判に、こういう粗暴さみたいなものがいつ噴き出してもおかしくないっていう感じは確かにどっかにあるような気がする。でもキレやすい若者ではない。
 今日はアマゾンから注文してた藤子不二雄の『UTOPIA』が届いた。まだ最初の方のページを少し読んだだけだけど、やっぱりいい雰囲気のマンガだ。付録のペーパークラフトを組んでにやにやしてる。