下書き20日目


 19ページ目を終えて20ページの3コマ目まで。休日だったけどたいしてはかどらなかった。
 平日は時間がなくて原稿が進まないんだけど、休みは休みで、できた余裕が別の興味やなんかにまわってしまって、けっきょくどっちにしてもたいして進行のペースに差はない。平均して一日1ページという感じなのだろう。締め切りがあるわけでもなし、ぼちぼち楽しんでいく。
 マンガの中では、外套を奪われたアカーキイが警察にかけあったり地元の名士のもとへ救いを求めにいったりという場面がつづいている。これはネームを作っている最中には自分でもまったく気づかなかったことだけど、マンガの中のアカーキイは原作とはことなり、抗議らしい抗議もしないし怒りをあらわにするということもない。
 ゴーゴリの原作だと、たとえば昨日描いたアカーキイの警察署への被害届けの場面なんかでは、同じ日に時間をかえて4回も顔を出して、なかなか面会しない署長に対して執拗に食い下がったりしている。自分のマンガの中じゃ、そこは一度だけ示したきりで、あっさりとアカーキイを引き下がらせてしまっている。原作どおりのしぐさを再現すれば、このシーンなんかはもっとおもしろくなってただろうとは思うし、抗議も怒りもしないアカーキイなんて、それはもうアカーキイではないとすらいえるけれど、これは描いている人間の資質としかいいようがない。そして、そこを手直しする気もない。むしろ自分の限界を明白に知ることができて、おもしろいと考える。
 いろいろ考えながらネームを描いていたはずにもかかわらず、自分ではまったく気づけずにいた盲点があった、というところがちょっとおもしろいなと思った。そしてそういうことはほかにもまだまだたくさんあるんだろうと思う。