下書き七日目


 今日の進捗成果。7ページ目終了、8ページ目に入る。
仕立て屋さん(ペテローヴィッチ)の自宅兼作業場の様子がうまく描けず、かなり手こずる。絵がうまく描けない場合の典型的なケースで、つまり端的に、わたしには仕立て屋さんという人々もその作業風景も環境もまったくの未知の領域なわけです。どんな雰囲気をもった人たちで、平均値的にどんな感じの肉付きをした体格をしていて、どんな道具を身のまわりにおいていて、それをどんなふうに使いこなしているのか。まーったくわからない。わからないもんはもう、フワーッと流すしかないわけですよ。洋裁とか大好きだったらよかったのにね。
 この人物とこの作業場はこのあとのページでもう一度描くことになるんで、ちょっと雰囲気だけでもネットの画像ででも調べておきたい。ただ、いい感じのゴリラがかけたのは良かった。

……マンガを描く前に、準備として必要最低限の道具をそろえてみた。40枚入りのA4の原稿用紙とペン軸ペン先(Gペン)、インク、それから墨汁に極細の筆ペン、修正用のホワイトと筆、枠線用にコピックのミリペン6本入りセット、30センチの定規なんかをあらためてそろえた。原稿用紙は漫画専用のもので、枠線にそったメモリがあらかじめ入っている。便利な仕様におどろいた。
 小学生のころ友だち数人とマンガを描いていたときは、文房具屋で無地のケント紙とか模造紙を買ってきて、あらかじめ自分で打った目印をたよりに10枚単位くらいで錐でまとめて穴を開けて枠線を引くガイドにしていたという記憶がある。
 とても便利になったと感じたけど、そこで、はたと気づいた。ゆくゆくの心積もりとしては、描きあげた生原稿を最終的にうちのプリンタで縮小コピーして、お手軽に、いわゆるコピー本というものに仕上げようと考えていたんだけど、手元にある原稿用紙じゃ「これ、メモリの青い線も写りこんじゃうんじゃね?」ってことに思いいたった。それはかっこわるい。これはどうも、プロの漫画家だとか同人誌を印刷所で刷るような本格的な人たちむけの画材なんだなってことに遅まきながら気づいた。
 これから作ろうとしている本は、自分のためのものと例の姪っ子、それから高校の頃からの友人への贈呈用、つごう計3部も製本すればブツとしてはことたりてしまうはずで、オフセット印刷しようとかはまったく考えていない。デジタル音痴なんで、スキャナでパソコンに取り込んで何か便利なソフト的なものを利用して何か不思議な感じでメモリの青線を消去する、みたいなことも、とても厄介なことになりそうだという予感がする。パソコンの前で頭を抱えている自分の姿がありありと目に浮かぶ。(過去に、サウンドバイスを買ってアナログ音源のデジタル変換をこころみるもあえなく失敗、という、今となっては思い出したくない苦い経験をもっている)。
 原稿用紙の表のメモリにマジックかなんかで四隅にガイドの点を打って、それをひっくりかえして透けて見える点をたよりに用紙の裏に絵を描こうか、とか考えたけども、それもひじょうにかったるい。これはやっぱり、PC作業の導入が必須なのかとちょっと腹をくくりはじめる。
 それとは別の懸念として、道具を買いそろえる直前から、スクリーントーンをどうしようかっていうのも気がかりだった。あればすごく便利だけど、でもお高いんでしょ?っていう。
 「コミックスタジオ」というマンガ制作に特化した支援ソフトが存在するってことは、ネットで同人誌(コピー本)の作り方を調べているときにたまたま知った。パソコン上でネームから仕上げ、出版所への入稿の準備までがすべて可能だということで、話だけ聞いた印象だととても便利そうなソフトだけど、原稿用紙に手書きでペン入れしたいという自分にはあまり関係ないものかなと思っていた。ただ、それをうまく扱うことができればスクリーントーンに費やすお金が(ソフト購入のための初期費用をのぞいて)実質ゼロになるっていう点は、すごく魅力的に思えた。ここにきてそのことを思い出した。
 どうせパソコン使って出力の作業しなけりゃならないんだったら、いっそのことこのソフトを買っちゃってもいいんじゃないか、と、今は思いはじめてる。さいわいコミックスタジオはペン入れまで終えたアナログ原稿を取り込んだ上での作業も可能らしいし、だったらペンタブにさわったことのない自分にもトーン貼るくらいのことはできるかもしれない。そこと、あともうひとつ懸案だった吹き出し内部のセリフの写植という作業も同時に解決するかもしれない。そこらへんだけにやることを限定すれば、デジタル音痴の自分にもなんとかこれを使いこなすことができるかもしれない。わたしの中のゴーストがそう囁いている。……んじゃないかな?
 なにはともあれ、機会を見つけてそのうち体験版をダウンロードして使い勝手をためしてみようと思う。